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東京地方裁判所 平成10年(ワ)21718号 判決

原告 住友不動産フィットネス株式会社

右代表者代表取締役 佐藤瑛

右訴訟代理人弁護士 岡内真哉

右同 伊藤茂昭

右同 町田行人

被告 株式会社太陽地所

右代表者代表取締役 才藤健二

右訴訟代理人弁護士 岩崎章

右同 渡邉和信

主文

一  原告と被告間で、別紙物件目録記載の建物の賃料が、平成五年八月から平成八年三月末日までの間、月額金四三九万円(消費税別)であることを確認する。

二  原告と被告間で、別紙物件目録記載の建物の賃料が、平成八年四月から平成九年六月二〇日までの間、月額金三五三万円(消費税別)であることを確認する。

三  原告と被告間で、平成八年四月一日に支払期が到来する別紙物件目録記載の建物の割増賃料が、金三五三万円(消費税別)であることを確認する。

四  被告は、原告に対し、金二八〇万一六〇〇円及びうち別紙1計算書「差額<1>-<2>」欄記載の各金額(但し平成五年八月分から平成八年三月分まで)について同金額に対応する同計算書「金利発生日」欄記載の日から各支払済みまで年一〇パーセントの割合による金員を支払え」。

五  原告のその余の請求を棄却する。

六  訴訟費用はこれを三分し、一を原告の、その余を被告の負担とする。

七  この判決は、第四項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  別紙物件目録記載の建物の賃料が、平成五年八月から平成八年三月末日までの間、月額金三五八万二七二七円であることを確認する。

二  別紙物件目録記載の建物の賃料が、平成八年四月から平成九年一〇月末日までの間、月額金二八八万〇八七二円であることを確認する。

三  平成八年四月一日に支払期が到来する別紙物件目録記載の建物の割増賃料が、金二八八万〇八七二円であることを確認する。

四  被告は、原告に対し、金一億七八三〇万七二三三円及びうち別紙2計算書「差額<1>-<2>」欄記載の各金額について同金額に対応する同計算書「金利発生日」欄記載の日から、うち金一億四一一九万二六〇二円に対する平成一一年一一月一六日から、各支払済みまで年一〇パーセントの割合による金員を支払え。

五  被告は、原告に対し、金一六八二万四五七二円及びこれに対する平成一一年一一月一七日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

第二事案の概要等

一  事案の概要

本件は、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」といい、同目録記載の事務所・店舗・駐車場全体を「本件ビル」という。)を賃借していた原告が、賃料減額請求権を行使し、賃料の確認請求及び超過分賃料の返還請求並びに本件建物明渡しに伴う保証金返還請求をするとともに、これら債権と未払賃料等債務とを相殺する旨主張している事案である。

二  争いのない事実等(争いのない事実のほかは、以下に掲記の各証拠と弁論の全趣旨を総合して認められる。)

1  賃貸借契約の締結

被告は、昭和六一年一〇月一日、原告に対し、本件建物(ただし、賃貸面積については、後記のとおり争いがある。)を、次のとおりの約定で貸し渡した(以下「本件賃貸借契約」という。)。(甲一、三)

(一) 賃料は一か月四五〇万円(消費税別、以下、特記する場合を除き、消費税についての記載を省略する。)、共用部分管理費は一か月七二万円とし、毎月二五日限り翌月分を支払う。

(二) 保証金は一億六二〇〇万円とする。

被告は、本件賃貸借契約が終了し、原告が本件建物を完全に明け渡した場合、契約期間六年以上一二年以内のとき保証金の一〇パーセント相当額の償却を差し引き、残額を原告に返還する。

(三) 賃貸借期間は、本件建物完成引渡の日から三年間とする。

(四) 賃貸人又は賃借人が期間満了の六か月前に相手方に対して別段の意思表示をしないときは更に三年間賃貸借期間を延長することができ、以後も同様とする。

(五) 賃借人は、賃貸人に対し、賃貸借開始の日から満三年ごとに割増賃料として新賃料の一か月分を支払う(以下「本件割増賃料」という。)。

(六) 賃貸借契約が終了し、賃借人が本件建物を明け渡さないときは、賃借人は、賃貸人に対し、賃貸借終了の日の翌日から明渡済みまで賃料相当額の倍額の損害金を支払う。

2  契約更新合意

平成二年四月二四日、原告と被告とは、本件賃貸借契約を、同月一日から更に三年間、賃料を一か月五〇四万円、共益費を一か月七三万円として更新することを約し、原告は、本件割増賃料として五〇四万円を支払った。(甲二)

3  契約自動更新1

平成五年四月一日、本件賃貸借契約は自動更新された。

4  賃料減額要求と支払拒絶1

原告は、被告に対し、平成五年七月八日付け書面で、同年八月分以降の賃料を一か月四五〇万円に減額する旨の意思表示をするとともに、更新時に支払うべき本件割増賃料の支払を拒絶し、同月分は減額後の賃料額を支払った。(甲四)

被告は、同年八月四日、渋谷簡易裁判所に対し、原告を相手方として、同年四月一日以降の賃料を一か月五六四万四八〇〇円とする旨の調停を申し立てたものの右調停が不成立に終わったため、被告はその後は従前賃料額の請求を続けたところ、原告は減額後の賃料額のみの支払を続けた。

5  契約自動更新2

平成八年四月一日、本件賃貸借契約は自動更新された。

6  賃料減額要求と支払拒絶2

原告は、被告に対し、平成八年三月二五日付け書面で、同年四月分以降の賃料を一か月三二三万円に減額する旨の意思表示をし、更新時に支払うべき本件割増賃料も支払わなかった上、被告が従前賃料額の請求を続けたにもかかわらず、同月分以降は右減額後の賃料のみを支払った。(甲五)。

7  支払要求と解除予告

被告は、原告に対し、平成八年六月一三日到達の書面で、平成五年八月分から平成八年六月分までの未払賃料合計二二七一万円及びこれに対する消費税六八万一三〇八円並びに平成五年四月一日及び平成八年四月一日に支払うべき本件割増賃料及びこれに対する消費税計一〇三八万二四〇〇円の合計三三七七万三七〇八円を同月二〇日までに支払うよう催告するとともに、右期限までに支払がされなかったときは、右期限の経過をもって本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。

8  別訴請求

(一) 被告は、原告に対し、平成八年八月二二日、本件建物の明渡し及び未払賃料等の支払を求めて東京地方裁判所に建物明渡請求を提起した(東京地方裁判所平成八年(ワ)第一六三四〇号建物明渡請求事件)。

右訴訟は、平成九年七月二五日、原告が被告に対し、本件建物を明け渡せ、金三二〇四万三三〇八円を支払え、平成八年六月二一日から本件建物明渡済みまで一か月金一〇三八万二四〇〇円の割合による金員を支払えとの趣旨の判決が出された。

(二) これに対して、原告が東京高等裁判所に控訴し(平成九年(ネ)第三五七五号建物明渡請求控訴事件)、平成一〇年六月一八日、原告が被告に対し、金二億〇一六二万二五〇〇円を支払えとの趣旨の判決が出された。(甲七)

(三) 原告及び被告は、それぞれ上告したが、最高裁判所は、平成一一年一一月九日、原告の上告事件(平成一〇年受第四八八号)につき、上告審として受理しない旨の決定を、被告の上告事件(平成一〇年(オ)第一九九二号)につき、上告を棄却する旨の決定をした。(以下右一連の訴訟を「前訴」という。)(甲八)

(四) 右(一)の審理において、不動産鑑定士田原拓治が鑑定人に選任され、本件建物の賃料につき平成五年七月八日当時月額四三九万円、平成八年四月一日当時三五三万円であると判断した(以下「前訴鑑定」という。甲六の一、二)。

9  本件訴訟における訴えの変更等

(一) 原告は、平成一〇年九月二四日、請求の趣旨を左記のとおりとする本訴請求を提起した。

(1)  本件建物の賃料が、平成五年八月から平成八年三月末日までの間、月額金三五八万二七二七円であることを確認する。

(2)  本件建物の賃料が、平成八年四月から平成九年一〇月末日までの間、月額金二八八万〇八七二円であることを確認する。

(3)  平成八年四月一日に支払期が到来する本件建物の割増賃料が、金二八八万〇八七二円であることを確認する。

(二) 原告は、平成一一年一一月一日付訴えの追加的変更申立書において、請求の趣旨を左記のとおり追加する旨の申立てをした。

被告は、原告に対し、金一億四五八〇万円及びこれに対する平成九年一一月一日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

(三) 原告は、平成一一年一一月三〇日付訴え変更申立書において、請求の趣旨を、左記のとおり、平成一一年一一月一日に追加した請求の趣旨と交換的に変更する旨の申立てをした。

(1)  被告は、原告に対し、金一億七八三〇万七二三三円及びうち別紙2計算書「差額<1>-<2>」欄記載の各金額について同金額に対応する同計算書「金利発生日」欄記載の日から、うち金一億四一一九万二六〇二円に対する平成一一年一一月一六日から、各支払済みまで年一〇パーセントの割合による金員を支払え。

(2)  被告は、原告に対し、金一六八二万四五七二円及びこれに対する本訴えの交換的変更申立書送達の日の翌日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

二  争点

1  原告の本訴請求は、前訴との関係で、二重起訴に当たり訴えの提起が許されないか、あるいは信義則上訴えの利益を欠くものか(本案前の申立て)。

2  本件建物の適正賃料はいくらか。

3  原告が相殺に供すべき債権を有するか。

4  原告は、右債権をもって、被告の有する債権(前訴確定債権)と相殺できるか。

三  争点に対する当事者の主張

1  争点1(本案前の申立て)について

(被告の主張)

(一) 二重起訴の禁止

本件訴えは、前訴で争点となっていた、本件賃貸借契約における賃料の適正な額につき、再度審理を求めるものであって、二重起訴に当たるから、却下されるべきである。

(1)  二重起訴の判断基準である訴訟物の同一という点は、形式的に判断されるものではなく、実質的な観点から判断されるべきである。

(2)  被告が原告に対して未払賃料等を請求した前訴において、借地借家法三二条三項における「相当と認める賃料」など、本件賃貸借における適正賃料額がどの程度かという点が裁判の重要な争点とされていた。

このように、前訴において、まさに訴訟の前提問題として賃料額が争点となりそれをめぐって主張立証がなされた以上、前訴の賃料額についての主張立証には後訴を遮断する効果が生じているというべきである。

(二) 信義則違反

本件訴えは、信義則上認められるべき出訴期間を経過したものであり、信義則違反により訴えの利益を欠くものというべきである。

(1)  原告は、平成八年三月二五日、平成八年四月中には東京地方裁判所に賃料確定訴訟を提起する旨通告したのみで、その後被告が提起した前訴においても、適正賃料額をめぐって主張立証をしたに止まり、その結果、前訴は確定し、被告としては、原告がもはや賃料確定訴訟を提起しないものと信頼した。

(2)  原告は、前訴の控訴審の口頭弁論終結時までに別訴を提起するか、少なくとも反訴を提起して賃料額を確定すべきであった。

(原告の主張)

(一) 二重起訴の禁止

本件訴えの提起は、二重起訴に当たらない。

(1)  二重起訴に当たるか否かの基準は、訴訟物の同一である。前訴の訴訟物は、賃料確定までの暫定的な賃料(賃貸人が主観的に相当と認める賃料)の支払請求権であり、本訴では、賃料減額請求権という形成権の存否あるいは同形成権行使の結果としての確定賃料額の請求権である。

(2)  原告は、前訴において、賃料減額請求の主張を抗弁とすら位置づけていない。

(二) 信義則違反

賃料減額請求には出訴期間の制限はないし、本件訴えが信義則上認められないという事情もない。

(1)  賃料減額請求には出訴期間の制限はない。賃料請求訴訟の事実審が終了したことは、賃料減額確認訴訟に対して何らの影響を及ばさない。

(2)  前訴において行った減額の意思表示は、賃料減額の確定を求めたことにも、賃料請求訴訟の抗弁ともならないから、賃料減額の確定を求める本訴手続とは法的には全く無関係であり、賃料確定訴訟を提起しないという信頼を導くものでもない。

2  本件建物の適正賃料はいくらか。

(原告の主張)

本件建物の平成五年七月八日時点の相当な支払賃料は月額三五八万二七二七円、同じく平成八年四月一日時点の相当な賃料は月額二八八万〇八七二円である。

(一) 鑑定の評価

(1)  不動産鑑定における対象部分は、契約面積にかかわらず、廊下、階段、エレベーター、エレベーターホール、トイレ、湯沸かし室等共用で使用される部分を除いた専用部分、すなわち賃貸借において有効に使用できる部分である。

本件賃貸借契約においては、共用部分が契約面積に含まれている。別紙図面赤線枠内は、専用部分であり、この面積は、一四六・九〇坪である。

(2)  前訴鑑定は、本件賃貸借契約の対象面積が一八〇坪であることを前提として平成五年七月八日時点の相当な支払賃料を月額四三九万円、同じく平成八年四月一日時点の相当な賃料を月額三五三万円と鑑定評価したのであるが、専用部分である一四六・九〇坪に換算して相当賃料額を決定すべきである。

前訴鑑定時には、<1>そもそも契約面積と現実の専用使用可能な面積とに違いがあることに原告側が気付いていなかったために、鑑定事項に契約面積が記載された、<2>鑑定人も専用面積が契約面積よりも小さいことに気付かなかったのであり、前訴の鑑定には、契約面積を基準に鑑定評価額を算出したという誤りがある。

(二) 信義則違反との主張に対して

前訴においては、あくまで信頼関係が破壊されていないことを争ったのであるから、鑑定の誤解を指摘しなくても、賃料減額を求めている本件においで鑑定の誤解を指摘しうることは余りに当然である。

(被告の主張)

仮に適正賃料を考えるとすれば、前説鑑定の結果によるべきである。

前訴鑑定によると、本件建物の適正賃料は、平成五年八月分から平成八年三月分までは賃料月額四三九万円、平成八年四月分から同年六月二〇日までは賃料月額三五三万円、平成五年四月一日の割増賃料四三九万円、平成八年四月一日の割増賃料三五三万円となる。

(一) 前訴鑑定に対する評価

(1)  本件賃貸借契約において、原告と被告は、本件ビル七階フロア全体(原告の専用部分の他、空調機械室、給湯室、男子、女子便所、エレベーターホール等の共用部分を含む)を一括して原告に貸すこと、すなわち、七階全体を利用できるということで契約面積を一八〇坪とすることに合意合した。

賃料算定の方法としても、本件ビル七階フロア全体で一八〇坪あることを一応の目安として全体でいくらという方法で合意された。

したがって、当初の合意で定まった賃料額を前提に、その後の物価の増減等の経済的変動を考慮して判断すれば足りる。

(2)  被告が原告に対して賃貸したのは、七階フロア全体であり、それを前提に契約賃料が設定されたことは前訴控訴審において認定されたとおりである。したがって、仮に適正賃料を考えるとしても、それは契約面積である七階フロア全体一八〇坪を前提として判断されるべきものである。

(二) 信義則違反

契約面積は賃料算定の一応の目安であるところ、本件賃貸借契約においては、本件ビル七階フロア全体(一八〇坪)を使用することが前提とされており、原告もそれを理解した上で契約したのであるから、原告に錯誤などないし、専用面積がどの程度かということ自体大きな問題ではない。

加えて、前訴で争っていたのであるから、既判力に抵触するし、原告は、鑑定の現場立ち会いの際も異議を述べるなどしていないことや、これまでの訴訟経過から、錯誤を主張すること自体信義則上許されない。

主張自体却下されるべきである。

3  争点3(債権の有無)

(原告の主張)

原告は、被告に対し、<1>保証金返還請求権として一億六三六五万五五〇六円、<2>不当利得返還請求権として五四七九万一五六六円、<3>借地借家法三二条に基づく、原告が既に支払った額と減額された賃料との差額(別紙2計算書「差額<3>-<1>」欄記載)及びこれに対する年一〇パーセントの割合による利息(別紙のとおり)の債権を有する。

(一)(保証金の返還額)について

被告は、原告に対し、本件建物の平成九年一〇月三一日明渡しに基づいて、保証金一億六二〇〇万円のうち、約定による(契約時から六年以上一二年以内保証金の一〇パーセント相当額償却)金一六二〇万円を差し引いた残金一億四五八〇万円を返還する義務が生じている。

そして、右残金に対する、平成九年一一月一日から原告が相殺の意思表示をした日である平成一一年一一月一五日までの商事法定利率年六パーセントの割合による遅延損害金は、一七八五万五五〇六円となる。

(1)  原告は、平成九年一〇月三〇日、被告の建物管理受託会社である訴外三鬼企画管理株式会社(以下「三鬼企画」という。)立会の下に、引渡し及びほぼ完全な原状回復を完了し、開き窓のハンドル一〇か所、窓の調整ハンドル一か所の欠落については、原告が製造元から取り寄せることとし、同月三一日付で明渡しとすることになった。

右明渡しは、契約時から六年以上一二年以内であるから、保証金の一〇パーセント相当額である金一六二〇万円を償却した残金一億四五八〇万円を返還する義務が生じている。

(2)  前訴においても、平成九年一〇月三一日をもって、本件建物を明け渡したものと認め、最高裁もこれを維持している。

(二) (不当利得)について

原告は、被告に対し、不当利得返還請求権として五四七九万一五六六円(消費税込み)の返還請求権を有する。

(1)  原告は、被告に対し、平成八年六月分から平成九年一〇月三一日の本件建物明渡まで、本件建物の「賃料」として、月額金三二三万円及びこれに対する消費税相当額を支払っていた。

次のとおり、合計額は、五四七九万一五六六円(消費税込み)である。

平成八年六月二一日から同月三〇日まで

金三二三万円×一〇日÷三〇日×一・〇三=一一〇万八九六六円

平成八年七月分から平成九年三月分まで

金三二三万円×九か月×一・〇三=二九九四万二一〇〇円

平成九年四月分から同年一〇月三一日まで

金三二三万円×七か月×一・〇五=二三七四万〇五〇〇円

(2)  前訴では、右支払分について、解除後の支払としての主張もなく、また賃料として支払われたものであるから、損害金として支払われたものとは認められないとされ、建物賃料及び賃料相当損害金の請求に対する弁済としては考慮されなかった。右支払分は、原告が法律上の原因なくして被告に支払っていたことになる。

(3)  不当利得は、前訴の既判力に抵触しない。

(三)(減額請求権行使による債権)について

被告は原告に対し、借地借家法三二条に基づき、別紙2計算書のとおり、原告が既に支払った額((「<1>既払賃料」)欄記載参照)と減額された賃料((「<2>減額された賃料」欄)記載参照)との差額(「差額<1>-<2>」欄記載参照)合計一億四一九二万六〇二円に年一〇パーセントの割合による利息を付して返還しなければならない。

(1)  争点2のとおり、本件建物の賃料は、平成五年七月八日時点で月額三五八万二七二七円、同じく平成八年四月一日時点で月額二八八万〇八七二円である。

(2)  原告は、被告に対し、別紙2計算書のとおり、平成五年八月分から平成八年三月分までは金四五〇万円((「<1>既払賃料」)欄記載参照)に消費税を付加した金額((「<1>消費税」)欄記載参照)、平成八年四月分から平成九年一〇月三一日までは三二三万円((「<1>既払賃料」)欄記載参照)に消費税を付加した金額((「<1>消費税」)欄記載参照)を支払っている。

(3)  平成八年六月二〇日の本件賃貸借契約の解除が認められるとすると、それ以降の損害金については、直接借地借家法三二条の適用はないことになるが、その構造は同様である。実質的にも、損害金が賃料の倍額相当と定められている本件においては、賃貸借終了時の賃料が確定しない限り損害金の額も確定しないから一旦は暫定賃料を前提にした損害金を支払わざるを得ない。したがって、通常の不当利得返還の場合よりも高い年一〇パーセントの割合による利率を付して返還すべき事情がある。

(被告の主張)

(一) (保証金の返還額)について

被告は、本件建物の明渡しを受けていない。

本件賃貸借契約書には、「本物件または造作設備の破損、故障箇所を乙の費用をもって修復し、速やかに本物件を原状に復して甲に明け渡さなければならない」(二三条(1) )と規定されている。

しかし、原状回復がなされていない箇所がある。

(二)(不当利得)について

前訴において、弁済の抗弁が出されずに裁判が確定している以上、既判力が及び不当利得はあり得ない。もし賃料として払ったならば、未払賃料合計二一六六万〇九〇〇円に充当されるはずである。

(三) (減額請求権行使による債権)について

(1)  本件建物の賃料は、当初から適正であり、原告の減額請求に理由がないことは争点2において明らかである。

(2)  仮に、前訴鑑定によっても、平成五年八月分から平成八年三月分までは賃料月額四三九万円、平成八年四月分から同年六月二〇日までは賃料月額三五三万円、平成五年四月一日の割増賃料四三九万円、平成八年四月一日の割増賃料三五三万円が適正となり、また債務不履行解除後の平成八年六月二一日以降は、鑑定賃料の倍額として月額七〇六万円が適正となる。

(3)  借地借家法三二条は、賃貸借契約が継続している期間中の限られたものであり、本件に類推されるべきものではない。

4  争点4(相殺)について

(原告の主張)

(一) 自働債権と相殺の意思表示

原告は、平成一一年一一月一六日到達の書面をもって、被告の有する暫定的な賃料等二億〇一六二万二五〇〇円の債権(前訴確定分)に対し、保証金返還請求権一億六三六五万五五〇六円(保証金一億四五八〇万円と遅延損害金一七八五万五五〇六円)と不当利得返還請求権五四七九万一五六六円の合計額二億一八四四万七〇七二円をもって対当額で相殺する旨意思表示をした。

(二) 受働債権について

被告の有する暫定的な賃料等二億〇一六二万円の債権は、あくまで暫定的なもので、平成九年一一月一日以降損害金を賃料の倍とすることは認められず、修正されるべきである。

すなわち、本訴で減額された適正賃料を基準にすれば、原告が支払った賃料分と適正賃料との差額(不足分)はわずかであり、かえって支払賃料分が一時的には適正な賃料を上回るものであるから、本件賃貸借契約において右差額分の存在が信頼関係を破壊したとするに足りない特段の事情に当たるから、そもそも債務不履行が生じておらず契約解除が認められない。このように解しても解除自体に既判力は生じていないから不都合はない。

したがって、賃料の倍額とする損害金は理由がないことになる。

また、仮に解除が認められるとしても、本件では賃料の倍額の損害金を請求することは、権利濫用である。

(被告の主張)

(一) 自働債権と相殺の意思表示

(1)  前訴において、被告は、原告に対し、<1>二一六六万〇九〇〇円(平成五年八月分から平成八年六月二〇日までの未払賃料計二一〇三万円及びこれに対する未払消費税分六三万〇九〇〇円)、<2>一〇三八万二四〇〇円(平成五年四月一日及び平成八年四月一日にそれぞれ支払うべき本件割増賃料とこれに対する消費税分)、<3>平成八年六月二一日から本件建物を明け渡した平成九年一〇月三一日までの賃料相当額の倍額の損害金一億六九五七万九二〇〇円の、合計二億〇一六二万二五〇〇円の請求権を有していることが確定している。

(2)  被告は、原告に対し、平成一一年一一月一五日到達の書面をもって、原告の有する保証金返還債務一億四五八〇万円に対し、前訴判決において主文に掲げられた、原告が被告に対し支払うべき未払の割増賃料一〇三八万二四〇〇円(前記(1) <2>)をもって対当額で相殺し、残額については平成八年六月二一日から平成九年一〇月三一日までの約定損害金(前記(1) <3>)の一部をもって同じく対当額で相殺する。

(二) 自働債権について

債権の存在は、前訴で確定しており、原告の主張は既判力に抵触する。

前訴において確定した本件賃貸借契約の解除が、本訴において認められないということはない。解除についても既判力が生じている。

また、前訴において認められた、賃料の倍額の損害金請求が権利濫用となることはない。

第三争点に対する判断

一  争点1(本案前の申立て)について

1  二重起訴禁止の点について

二重起訴の禁止は、既判力の抵触可能性を回避することと同時に審判の重複による不経済と相手方当事者の応訴の煩わしさを避ける意味もあるから、二重起訴として禁止される否かは、訴訟物である権利関係の同一性を基準に検討すべきであるところ、前訴では、(賃貸借契約終了に基づく目的物返還請求としての建物明渡請求権と)賃貸借契約に基づく履行請求としての賃料支払請求権が訴訟物となっていたのに対し、本訴においでは、賃料減額請求権の形成権の行使による賃料額の確定が争点となっているのであるから、訴訟物である権利関係において同一性があるとはいえず、二重起訴に当たるということはできない。

2  信義則違反の点について

証拠(甲七)によれば、前訴においては、賃貸借契約の終了原因があるかということの前提問題として、本件賃貸借契約の賃料が借地借家法三二条三項にいう「相当と認める額」かどうかを検討するに当たって、また「相当と認める額」に足りない支払がされている場合に、信頼関係を破壊しない特段の事情があるかを検討するに当たって、鑑定が実施され、その結果に基づいて、賃貸人が主観的に相当と判断した額が社会通念上著しく合理性を欠くものではないと判断されたこと、原告が適正とする賃料額(支払額)が客観的に適正であったと認める余地もあると判断されたこと(但し賃料確定訴訟において確定されていない以上相当と認める請求額を支払う義務があるとして債務不履行となる旨判断されている)が認められる。

右事実関係からすれば、前訴では、賃料額の確定が直接審理されたのではなく、あくまで債務不履行に当たるかということの前提問題として、間接的に適正賃料額が問題となったに過ぎないから、賃料の適正額を定めることを求める本訴が、前訴との関係において、信義則上、訴えの利益を欠き、訴え提起が許されないものとなると解することはできない。

二  争点2(適正賃料額)について

1  証拠(甲八)によれば、以下の事実を認めることができる。

(一) 前訴控訴審において、原告は、本件建物の賃貸面積は正確には四八五・六二平方メートルにすぎないから、被告が賃料を一か月五〇四万円として行った請求が過大催告であるとか、信義に反し催告としての効力を有しないと主張したことに対して、前訴控訴審は、被告が、原告に対し賃貸している部分であると図面表示した部分(別紙赤線枠内)の面積は四八五・六二平方メートルであると認められたこと、原告と被告が本件賃貸借契約を締結する経緯等から、本件賃貸借契約は七階部分全体を目的として締結されたものであって、面積の表示は物件の特定のほかには賃料額算出の一応の目安としての意味を有するにすぎないことを認定した上、原告の右主張は採用できないと結論付けている。

(二) また、原告は、前訴鑑定に際して、現場に同行して立ち会い、その際格別の異議も止めずに注意喚起もしなかったことが認められる。そして、原告は、右鑑定結果を引用しながら自らの減額請求が正当である旨主張していること、右鑑定が賃貸面積を五九五・〇四平方メートルとして算定していることを主張したことが認められる。

(三) 他方、原告は、平成八年三月二五日付で賃料確定訴訟を提起するとしながら、前訴控訴審口頭弁論終結後に至るまで、賃料確定の訴え(本訴)を提起しなかったことが認められる。

(四) さらに、原告は、本訴においても、前訴鑑定の手法を用いて、面積を変更した上減額請求の根拠としていること、被告は、減額は認められないという主張を前提としながらも前訴鑑定の手法及び結果をその主張において引用していることが認められる。

2  右事情からすれば、原告が、本訴に至って、前訴鑑定の前提である賃貸面積あるいは専用面積について疑義を述べ、新たな主張をすることは、信義に反し許されないというべきである。

すなわち、右鑑定内容等につき、前訴において鑑定の算定根拠につきるる主張し、前訴控訴審口頭弁論終結後に至って本訴を提起し、別途鑑定算出根拠としての面積を変える主張を行うことは、前訴との関係において事実上同一の内容を検討することになるから、審理の蒸し返しといえ、特段の事情がない限り、許されないというべきである。 しかも、右鑑定に対する主張も、鑑定方法や判断内容それ自体に問題があるという決定的なものではなく、その手法等を肯定しながらも種々考慮すべき賃料算定の一事情に関する事柄であるから、適正な判断をゆがめるものでもない。

そうすると、本訴において、鑑定の算定根拠である面積について、本訴の請求をすることは信義則上認められないというべきである。

三  争点3(債権の存否)について

1  (保証金の返還額)について

証拠(甲八、乙二五)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、平成九年一〇月三〇日、三鬼企画の立会の下に、開き窓のハンドル一〇か所、窓の調整ハンドル一か所の欠落を除き、引渡し及び原状回復を完了したことが認められ、右事実をもって本件建物の明渡しと認めるのが相当である。

本件賃貸借契約によれば、契約時から六年以上一二年以内に契約が終了する場合には、保証金の一〇パーセント相当額を償却することになっているから、一〇パーセントである一六二〇万円を保証金一億六二〇〇万円から差し引いた残金一億四五八〇万円を返還する義務が生じることになる。

2  (不当利得返還請求権)について

(一) 不当利得返還請求権の存否について

証拠(甲八)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件賃貸借契約が平成八年六月二〇日に解除されたのちも、月額三二三万円(消費税含め三三二万六九〇〇円)を支払続けていること、前訴においては、右支払は、原告が損害に対する支払との主張をしていないこともあってか、解除後の損害金の算定において考慮されていないことが認められる。

そうすると、前訴において、右支払が訴訟物となっていないことはもちろん、弁済の抗弁として審理されているわけでもないことからすれば、前訴との関係で、右支払額を不当利得返還請求権と構成した上、本訴において審理の対象とすることが既判力に抵触するわけではなく、また、信義則上主張が妨げられるわけでもない。

右支払を被告が取得しているから、法律上の原因なくして被告に利得があるとして、不当利得返還請求権が発生する。

(二) 賃料相当損害金の額について

次に、原告は、原告が主張していた賃料額が適正賃料額であるから、被告が平成八年六月二〇日に行った解除が無効である旨主張している。

しかし、前訴において判示されているように、被告の請求した相当と認める額(社会通念上著しく不合理といえない請求額)を拒んだことが本件賃貸借契約の解除原因となるのであり、適正な賃料額を支払っていたというだけでは信頼関係を破壊しない特段の事情に当たらない。

したがって、支払っていた賃料額が客観的に適正であるから解除は遡って無効であるとする原告の主張は、それ自体失当である。

また、賃料相当額の倍額を損害金として請求することが権利の濫用に当たるとする原告の主張は、権利の濫用であることを基礎付けるに足る事情を認めることができず、採用できない。

3(減額請求権行使による債権の有無)について

(一) 適正な賃料について

(1)  鑑定人は、当事者と利害関係を持たない不動産鑑定士であり、近隣地域の概況、対象不動産の状況を確認し、実質地代を求めた後、通常、継続賃料の鑑定に採用される差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法を評価の基礎として採用した上、本件建物につき、平成五年七月時の継続賃料が、差額配分法により四三二万二〇〇〇円、スライド法(1) により四四三万五〇〇〇円、スライド法(2) により五五二万六〇〇〇円、利回り法により四四一万六〇〇〇円となること、平成八年四月時の継続賃料が、差額配分法により三四〇万円、スライド法(1) により三六四万四〇〇〇円、スライド法(2) により五四四万五〇〇〇円、利回り法により三六五万五〇〇〇円、賃貸事例比較法により三四〇万円となることをそれぞれ認定し、さらに諸般の事情を考慮した結果、平成五年七月時の賃料として四三九万円、平成八年四月時の賃料として三五三万円が適正であると判断した。

(2)  右鑑定は、通常、継続賃料の鑑定に採用される差額配分法、スライド法、利回り法、賃貸事例比較法を評価の基礎として考慮した上、本件の諸般の事情を総合考慮して、各試算賃料の値を基準に適正額を判断している。この手法は、唯一つの手法によって賃料を決定するのではなく、多角的に適正な賃料を考察することによって、各手法の持つ短所を補うもので、合理的なものといえる。

そして、基礎とした資料、判断の結果及び過程において、合理的な範囲内にあるものといえ、裁判所の判断の基礎とすることができる。

(3) 前訴鑑定によれば、本件建物の適正賃料は、平成五年八月分から平成八年三月分までは賃料月額四三九万円、平成八年四月分から平成九年六月二〇日までは賃料月額三五三万円、平成五年四月一日の割増賃料四三九万円、平成八年四月一日の割増賃料三五三万円となる。

(二) 適正な賃料を超過する額について

(1)  原告は、別紙1計算書のとおり、平成五年八月分から平成八年六月二〇日まで、右確定した適正な賃料を超過する賃料額の支払を一部しているから、被告が返還すべき合計額は、二八〇万一六〇〇円及びうち別紙1計算書「差額<1>-<2>」欄記載の各金額について同金額に対応する同計算書「金利発生日」欄記載の日から各支払済みまで年一〇パーセントの割合による金員となる。

但し、平成八年三月分からは、適正賃料額が、既払賃料額を上回るので、被告が不足分の請求をしていない本件においては、除外されることになる。

(2)  次に、原告は、平成八年六月二一日以降の支払についても、右同様、借地借家法三二条により、超過額の支払とそれに対する年一〇パーセントの割合による利息を付すべきであると主張している。

しかし、賃貸借契約終了(解除)後の支払についても、同条の適用があるかは疑問であるばかりでなく、そもそも、平成八年六月二一日以降の支払については、2で述べたように、賃料に対する支払として扱われていないことから原告自身不当利得として構成しているのであって、同条の予定する賃料ということはできない。

したがって、右部分は、理由がない。

四  争点4(相殺の可否)について

1  債権の存在

争点3において、確定したように、平成一一年一一月一五日の時点での権利関係を見ると、原告は、被告に対し、<1>保証金返還請求権一億六三六五万五五〇六円(一億四五八〇万円及び一七八五万五五〇六円)、<2>不当利得返還請求権五四七九万一五六六円の合計二億一八四四万七〇七二円の債権を有している。

被告は、原告に対し、<1>二一六六万〇九〇〇円(平成五年八月分から平成八年六月二〇日までの未払賃料計二一〇三万円及びこれに対する未払消費税分六三万〇九〇〇円)、<2>一〇三八万二四〇〇円(平成五年四月一日及び平成八年四月一日にそれぞれ支払うべき本件割増賃料とこれに対する消費税分)、<3>平成八年六月二一日から本件建物を明け渡した平成九年一〇月三一日までの賃料相当額の倍額の損害金一億六九五七万九二〇〇円の、合計二億〇一六二万二五〇〇円の請求権を有している。

2  相殺の効力

(一) 弁論の全趣旨によれば、右債権は、いずれも平成一一年一一月一五日当時相殺適状にある。

(二) ところで、原告と被告はそれぞれ重複する形で相殺の意思表示をしているから、相殺の効力につき、意思表示の先後が問題となるが、相殺の意思表示は要式行為ではないことから、その明確な意思が相手方に到達していれば足りることになる。

(三) 証拠(乙二六)によれば、平成一一年一一月一五日に、被告が原告に対して、相殺する旨の記載のある準備書面をファクシミリによって送達しており、同日原告に到達したことが認められるから、これをもって、被告による相殺が優先することになる。

3  相殺

(一) 被告の相殺

右のとおり、被告の有する<2>未払の割増賃料一〇三八万二四〇〇円を、まず相殺適状にある原告の有する、<2>保証金返還請求権一億六三六五万五五〇六円と相殺し、残る原告の債権一億五三二七万三一〇六円については、さらに被告が原告に有する、<3>約定損害金一億六九五七万九二〇〇円をもって、対当額で相殺し、これにより原告の<2>保証金返還請求権は消滅する。

この時点では、被告は原告に対し、なお、<3>右約定損害金残額の一六三〇万六〇九四円の債権のほか、平成五年八月分から平成八年六月二〇日までの未払賃料合計二一六六万〇九〇〇円の債権を有する。

(二) 原告の相殺

(1)  被告による相殺の意思表示により、右のとおり、債権債務関係が消滅した後、原告は、被告に対し、<2>不当利得返還請求権五四七九万一五六六円を有している。

被告は、不当利得については相殺の主張をしていないから、次に原告の相殺の主張を検討することになる。

(2)  原告は、右不当利得返還請求権について、なお被告の有する約定損害金残金一六三〇万六〇九四円に対し、対当額で相殺し、これにより、右被告の債権は消滅する。

原告の不当利得返還請求権は、残額三八四八万五四七二円となるが、なお、被告の暫定的賃料等債権を対当額で相殺させる旨主張しているから、不当利得返還請求権について、なお被告の有する<1>二一六六万〇九〇〇円に対し、対当額で相殺することにより、原告の不当利得返還請求権は全て消滅することになる。

他方、被告の有する<1>未払賃料は、残金一六八二万四五七二円となる。

第四結論

一  以上から、原告と被告の本件賃貸借契約をめぐる債権債務関係は、次のとおりとなる。

1  本件賃貸借契約における、本件建物の適正賃料は、平成五年八月分から平成八年三月分までは賃料月額四三九万円、平成八年四月分から平成九年六月二〇日までは賃料月額三五三万円、平成五年四月一日の割増賃料四三九万円、平成八年四月一日の割増賃料三五三万円と認められる。

2  原告の被告に対する債権は、二八〇万一六〇〇円及びうち別紙1計算書「差額<1>-<2>」欄記載の各金額について同金額に対応する同計算書「金利発生日」欄記載の日から各支払済みまで年一〇パーセントの割合による金員である。

3  被告の原告に対する債権は、本件賃貸借契約における<1>未払賃料残金一六八二万四五七二円となる。

二  そうすると、原告の各請求は、次の限度で理由がある。

1  本件賃貸借契約における本件建物の賃料が、平成五年八月分から平成八年三月分までは賃料月額四三九万円、平成八年四月分から平成九年六月二〇日までは賃料月額三五三万円であること、平成五年四月一日の割増賃料四三九万円、平成八年四月一日の割増賃料三五三万円であること

2  二八〇万一六〇〇円及びうち別紙1計算書「差額<1>-<2>」欄記載の各金額(但し平成五年八月分から平成八年三月分まで)について同金額に対応する同計算書「金利発生日」欄記載の日から各支払済みまで年一〇パーセントの割合による金員

三  よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 足立正佳)

物件目録

所在 渋谷区宇田川町一二六番地一〇、一二六番地六、一二六番地一一、一二六番地九

家屋番号 一二六番一〇

種類 事務所 店舗 駐車場

構造 鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下二階付八階建

床面積 一階 五五七・九九平方メートル

二階 五五三・一三平方メートル

三階 六一三・一五平方メートル

四階 六二五・三四平方メートル

五階 六二五・三四平方メートル

六階 六二五・三四平方メートル

七階 六二五・三四平方メートル

八階 一八三・〇一平方メートル

地下一階 六三四・四八平方メートル

地下二階 六〇四・〇一平方メートル

但し、右のうち七階別紙図面赤線部分

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